オールドノリタケ 盛上草花文花瓶
オールドノリタケの盛上草花文花瓶です。1891年頃~1915年頃にアメリカに輸出され、約100年の時を経て日本に里帰りしてきました。オールドノリタケは現在のノリタケカンパニーが明治末期から戦前までに製造したアンティーク陶磁器の総称です。豪華絢爛な西洋風絵付け陶磁器は海外で人気を博しました。近年では、約100年という長い歳月を経て日本に里帰りしてきたことで、わが国でも大変人気が高くなっており、美術工芸品として高い地位を確保しつつあります。
名称 オールドノリタケ 盛上草花文花瓶
裏印 1891年頃 - 1915年頃 通称:メープルリーフ印
状態 カケ・ワレ・ヒビなどなく良好な状態
寸法 H:13cm L:10cm W:23cm
素材 陶磁器
原産 日本
仕入 アメリカ
桐箱 有
付属 作品証明書
数量 現品のみ
価格
お問合せ 【 u3067 】
< オールドノリタケの世界 >
〜ノリタケの生みの親、森村市左衛門とは 〜
江戸から明治への時代の変革期の真っ只中である1839年に森村市左衛門は生を受けました。1858年に日米修好通商条約が締結、翌年に横浜港が開かれると日本に「自由経済」の波が押し寄せます。しかしその中で日本に不利な国際為替相場によって日本の金は質の悪いメキシコ銀と交換、膨大な小判を海外へ流出させられることになりました。これを憂えた市左衛門は、武具商として出入りのあった大名家の家老の紹介で福沢諭吉と出会います。福沢はこの問題について「外国人が持っていく金を取り戻すには、輸出貿易を行う他に道はない」と語ります。市左衛門は自らがその先駆者となるべく、国のためになるならばと武具事業で蓄えた資金を投げうって1876年
東京・銀座に貿易商社「森村組」を創設します。さらに市左衛門に共感した異母弟・森村豊は同年3月に船でニューヨークへ発ちます。これこそが日米の貿易の始まりです。当時の貿易商は政府から資金援助を受けているのが普通でしたが、市左衛門は「独立自営」を掲げ、援助を断っています。その理由は自らの力で苦境を乗り越えることこそが会社を発展させる原動力であるとの信念があったからです。1876年11月、豊は仲間とともにニューヨークに「日の出商会」を設立し、雑貨商を開業しました。これが開国後の日本における民間初の日米貿易と言われています。東京の市左衛門が陶磁器や漆器、銅器、人形等、外国人に好まれそうな商品を買い集めて豊へ送り、当初の売り上げは好調でした。しかし次第に業績に伸び悩むようになり、仲間達と事業への考えにずれが生じた豊は、市左衛門から学んだ「独立自営」の精神で日の出商会を解消し、1878年に新たに「日の出商会森村ブラザーズ」を設立します。その3年後の1881年には社名をモリムラブラザーうへと変更し、アメリカ進出の基盤が整うこととなったのです。
1893年、これまで日本画絵付けを主としてきた森村組の転換期となる出来事がありました。森村組はこの年にシカゴ万博の視察を行います。欧米諸国の陶磁器を目にした彼らはその彩画のレベルに衝撃を受け、海外でのさらなる需要の増加のために洋風画への転向を決意します。しかし、日本画の絵付けに専念していた画工達にとっては洋風画の習得は容易な問題ではなく、当初は洋風画の絵付けを試そうともしませんでした。画工たちの説得と技術の習得には苦心を要しました。やがて熱意の説得が実を結び、もともと高い技術を要していた画工たちは洋風画を習得するに至り輸出先から注文が殺到するようになりました。
こうした洋風画の絵付けが進むとともに、図柄を引き立たせるための白色陶磁器の製造と均一な品質のテーブルウェアの製造という課題が生まれます。オーストリアやドイツの窯を訪れ、何年にもわたる研究の末、ついに日本初のディナーセットが完成します。白色硬質磁器の製造を志してから完成までなんと20年という歳月が流れていました。
森村組は瀬戸の加藤春光窯をはじめ、川本桝吉などの優れた窯と専属契約を結び、陶磁器の生地製造を依頼することにしました。絵付けは当初、九谷地方から画工を招き行っていましたが、1889年頃には、京都の石田佐太郎、名古屋の西郷久吉、東京の帝室技芸員会員、河原徳立・井口昇山など錚々たる顔ぶれが森村組の専属画工場として絵付けを行っていました。この頃の作品には明治の職人技が生きた精緻なものが多く残されており、現在では再現不可能と言われています。こうした様々な課題を乗り越え欧米に受け入れられた森村組の製品は、約100年もの間欧米で愛され、生活に根付いていきました。「誓って、至誠事に当り、もって素志を貫徹し、永遠に国利民福を図ることを期す。」誠実であること、何があってもあきらめず物事に向き合い続けること、私欲のためでなく社会のために役立つこと、森村市左衛門が掲げてきた信念は100年以上たった今でも、オールドノリタケという作品を通して私たちに語り掛けてくれます。作品の美術的価値はもちろんのこと、日米貿易や現在の陶磁器産業の礎を築いた先人たちの物語について少しでも多くの方にお伝えできていれば幸いです。
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